あまいおかし、
日記もどき↑ 暴走のままに文章(現在rkrn多め)↓
2007'04.14.Sat
(芭録)
声を立てずに泣くことは可能なのだろうか。
それはまるでざぁざぁと、ざぁざぁと降る雨のようで、音のない雨はいくらだってあるけど音のない涙は今まで見たこともない。少しだけ柔らかに音を立てて、涙は溢れ出すのだ。
「せーんぱい・・・」
ドアにこつん、と頭をぶつける。応答はない。ただときどき鼻をすするようなそんな音が聞こえるからもしかしたら、もしかしなくても泣いているのかもしれない。センパイが部屋にこもってからもうどれっくらいの時間がたったのだろうか。センパイは帰ってきて何も言わずに一直線にこの家で唯一鍵がある寝室にはいると、大きな音を立ててドアを閉めたっきりうんともすんともいわず、応答はさっきからさっぱりだ。何があったのかももちろんさっぱりで。
まったく・・・と、小さくためいき。
センパイはいつだってこうだ。泣いているところを他人に見せるのはいや、という。そんなこといって卒業式に大泣きしていたセンパイの姿をしっかり見てしまったから信用はできないけど。
センパイはいつだって一人で泣く。声を殺して泣くからときどき気付くことすらできない。恋人失格だって、まぁ思われてもしょうがないか。そんな風に気付かれないように気付かれないように泣いているくせに気付いてくれないと少しだけ機嫌が悪くなる。まったく、もう一回ためいき。
「せーんぱい、聞いてます?そこ一応二人の寝室なんですけど」
聞こえてないはずないのだ。だってドアの向こう側には同じようにドアに寄りかかるセンパイがいるはずなのだから。
こつん、こつん。と。止まらないのはドアにぶつける後頭部のリズム。こつんこつん、こつーんこつーん、こつんこつん。でエスオーエスのモールス信号、なぁんてね。
なんて言ってる場合ではなく。
とりあえず今はこの天岩戸(あまのいわと)の開け方を考えなければいけない。昔に習って宴会をするわけにもいかないし(そもそもセンパイはお酒が好きじゃないし。)だからって食べ物に釣られてくれるほどお子様じゃないだろう。(その辺は妙に頑固というかなんというか、だ。)情に訴えるという作戦もあるけど(だけど今あの人に俺をかまう余裕はないだろう。)それはできれば使いたくないし。(どちらかというと多大なショックを受けるのは自分なのだ。)原因が分かればせめて、それにあった対処法ぐらい思いつくだろうけど今の状態ではセンパイが泣いている、とそれだけの事実でしかない。それだけの事実ではどうにも仕様がないのだ。(いくらあいしてるやすきを並べたってセンパイはきっとこちらを見てくれないから。)
人間どうしようもないときはためいきをつくしかないらしい。はぁ・・・と本日三回目のためいきをつく。どうしてくれるんすか、センパイ。ためいきつくと幸せ逃げるんですよ、今日あんたのせいでどれだけ俺から幸せが逃げたと思ってるんですか、なんて。
冗談でも絶対に言えない。(なぜなら傷つくのは確実に自分だと分かっているからだ。きっとお前の幸せなんてどうでもよさ気、と一刀両断されてしまうだろうから。)
こつん、こつん、と。どうしようもなくたたずむ。ドア一枚隔てた向こうにいるはずのセンパイの気配は妙に希薄だ。ときどき聞こえてくる鼻をすする音になんでか安心してみたり。こつんこつん、と。響き渡るリズムはセンパイの耳にどう響いているのだろうか。
たった数秒のこちらからのエスオーエス。
ホントは知ってる。ドア一枚分とセンパイの重み。素直じゃなくていつだって意地っ張りなセンパイのたった一つのエスオーエスの仕方。
「ったく、もう・・・」
またためいきついちゃったじゃないですか。
こつん、こつん、・・・ごつんっ。
「った・・・?」
勢いあまってドアにしたたかに頭を打ち付けた、かと思ったらそうでもなく。反転した視界の上にセンパイの顔が見えた。目は赤い。すこしだけ、落ち込んでるみたいだ。
「あ、センパイ」
「・・・なぁにやってる気?」
それでも笑ってくれるなら、いいか、と思う。
*
昔のお話。本に出そうと思ってたんですけどね。
声を立てずに泣くことは可能なのだろうか。
それはまるでざぁざぁと、ざぁざぁと降る雨のようで、音のない雨はいくらだってあるけど音のない涙は今まで見たこともない。少しだけ柔らかに音を立てて、涙は溢れ出すのだ。
「せーんぱい・・・」
ドアにこつん、と頭をぶつける。応答はない。ただときどき鼻をすするようなそんな音が聞こえるからもしかしたら、もしかしなくても泣いているのかもしれない。センパイが部屋にこもってからもうどれっくらいの時間がたったのだろうか。センパイは帰ってきて何も言わずに一直線にこの家で唯一鍵がある寝室にはいると、大きな音を立ててドアを閉めたっきりうんともすんともいわず、応答はさっきからさっぱりだ。何があったのかももちろんさっぱりで。
まったく・・・と、小さくためいき。
センパイはいつだってこうだ。泣いているところを他人に見せるのはいや、という。そんなこといって卒業式に大泣きしていたセンパイの姿をしっかり見てしまったから信用はできないけど。
センパイはいつだって一人で泣く。声を殺して泣くからときどき気付くことすらできない。恋人失格だって、まぁ思われてもしょうがないか。そんな風に気付かれないように気付かれないように泣いているくせに気付いてくれないと少しだけ機嫌が悪くなる。まったく、もう一回ためいき。
「せーんぱい、聞いてます?そこ一応二人の寝室なんですけど」
聞こえてないはずないのだ。だってドアの向こう側には同じようにドアに寄りかかるセンパイがいるはずなのだから。
こつん、こつん。と。止まらないのはドアにぶつける後頭部のリズム。こつんこつん、こつーんこつーん、こつんこつん。でエスオーエスのモールス信号、なぁんてね。
なんて言ってる場合ではなく。
とりあえず今はこの天岩戸(あまのいわと)の開け方を考えなければいけない。昔に習って宴会をするわけにもいかないし(そもそもセンパイはお酒が好きじゃないし。)だからって食べ物に釣られてくれるほどお子様じゃないだろう。(その辺は妙に頑固というかなんというか、だ。)情に訴えるという作戦もあるけど(だけど今あの人に俺をかまう余裕はないだろう。)それはできれば使いたくないし。(どちらかというと多大なショックを受けるのは自分なのだ。)原因が分かればせめて、それにあった対処法ぐらい思いつくだろうけど今の状態ではセンパイが泣いている、とそれだけの事実でしかない。それだけの事実ではどうにも仕様がないのだ。(いくらあいしてるやすきを並べたってセンパイはきっとこちらを見てくれないから。)
人間どうしようもないときはためいきをつくしかないらしい。はぁ・・・と本日三回目のためいきをつく。どうしてくれるんすか、センパイ。ためいきつくと幸せ逃げるんですよ、今日あんたのせいでどれだけ俺から幸せが逃げたと思ってるんですか、なんて。
冗談でも絶対に言えない。(なぜなら傷つくのは確実に自分だと分かっているからだ。きっとお前の幸せなんてどうでもよさ気、と一刀両断されてしまうだろうから。)
こつん、こつん、と。どうしようもなくたたずむ。ドア一枚隔てた向こうにいるはずのセンパイの気配は妙に希薄だ。ときどき聞こえてくる鼻をすする音になんでか安心してみたり。こつんこつん、と。響き渡るリズムはセンパイの耳にどう響いているのだろうか。
たった数秒のこちらからのエスオーエス。
ホントは知ってる。ドア一枚分とセンパイの重み。素直じゃなくていつだって意地っ張りなセンパイのたった一つのエスオーエスの仕方。
「ったく、もう・・・」
またためいきついちゃったじゃないですか。
こつん、こつん、・・・ごつんっ。
「った・・・?」
勢いあまってドアにしたたかに頭を打ち付けた、かと思ったらそうでもなく。反転した視界の上にセンパイの顔が見えた。目は赤い。すこしだけ、落ち込んでるみたいだ。
「あ、センパイ」
「・・・なぁにやってる気?」
それでも笑ってくれるなら、いいか、と思う。
*
昔のお話。本に出そうと思ってたんですけどね。
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